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新築した自宅の天井にWiFiアクセスポイントを設置した

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この記事は2025年8月に発効した同人誌「C106 LaboLife」に寄稿した記事を再編集したものです。

APが欲しい。天井に。

2024年某月、ひょんなことから家を建てることになりました。もともと建売の計画だった宅地販売で、区画整備の最初の段階だったため制限はあるものの注文住宅のように自由に設計できるとのことでした。

さてこの同人誌に寄稿するようなオタクが住環境で気にすることといえばトイレよりもネットワーク環境です。1筆者も例にもれずFTTHの光回線を導入したり、宅内LANを整備したりする物理ネットワーク設計に手を入れることが構想にあり、中でも一番やりたいのは「WiFiに法人向けアクセスポイント(AP)を天井に設置する」でした。賃貸だとさすがに尻込みしますが、注文住宅なら話は別です。

WiFiは世間一般的には「WiFiルーター」という名前でAPとルーター部分が一体化されているものがほとんどです。導入コストが安いのと設定が簡便なのがメリットですが、凝ったことをするには機能不足です。また一人暮らし程度の広さであれば十分カバーできますが、それ以上になってくるとルーターが一体になっている都合上設置場所が限定され、電波が弱い部分をカバーするためにメッシュWiFiなどの中継器を使う必要があります。しかし電波が弱いのにバックボーンをWiFiで接続してチャンネルを占有する上、恒久的に設置される機器に壁のコンセントを使うメッシュWiFiは無駄です。

一方で有線LANで接続したAPを複数台導入することで広範囲を安定した品質でカバーすることが可能です。ルーター機能のない単体のAPとして販売されているものは家庭向けではなく小規模オフィス向けなので管理機能が豊富でいじりがいもあります。何よりこの手の製品は同時接続台数が家庭用WiFiルーターよりはるかに多いので、WiFiでつながるデバイスをたくさん持っているオタクでなくても家電をはじめとして2桁以上のデバイスがつながるような昨今では単体のAPの設置はとても有利です。

今回は注文住宅として自由な設計が可能になった筆者が、天井にAPを設置するまでの流れを紹介します。

APの選定

さてまずはAPの選定をします。Amazonなどでも手に入るAPは様々なモデルがありますが、求めている機能として以下のものを挙げて選定しました。

- 見た目にノイズが無いこと
- 発熱が少ないこと
- PoEの給電に対応
- WiFi6以上に対応

正直なところ今回はパフォーマンスより見た目を重視しています。良くも悪くもAPは企業向けなので見た目が武骨なものや、ステータス表示のLEDが複数光るものが多いのでノイズが少ない機種を探します。WiFi規格は最低でもWiFi6に対応していればよしとしました。PoE(Power Over Ethernet)は電源のための線を別で引きたくないので条件に入っています。ほとんどすべての機種はPoEに対応しているのであまり意識しなくてもよいかもしれません。

選定の結果、Cisco business CBW150AXを選択しました。最大スループットは11axで1200Mbpsで、LAN側は1GbEと、正直ほかの最新のモデルより見劣りしますが、見た目がシンプルなので一番気に入りました。このAPは執筆時点で1台2.3万円程度と安いのも特徴で、同じ価格帯で比べると他が11ac止まりだったりなどするため結構マシなスペックです。

CBW150AX

CBW150AX外観

LANの整備

さてAPは決まったのでそれを接続するLANの構成を決定する必要があります。ハウスメーカーに対して指示しないとLANのLの字もない竪穴式住居が完成するため、コンセントの配置を含めたLANの構成を設計した資料を提出します。

我が家のLANの配線図

建設時の10GBase-Tの導入はスイッチの発熱の観点等から見送りましたが、将来的なリプレースも考えて10GbE ReadyにしたいのでLANはCAT 6Aで配線するようにお願いしました。さすがにハウスメーカーは賃貸業者と違ってやるとなったらネットワーク周りの話が通りやすかったのは良かったです。

LANのRJ45の口は宅内の全居室に配置し、1階の中央付近に各部屋のLANを集約と外からの光ファイバーの引き込み口をまとめた情報分電盤を設けました。よくある構成だとユニットバスの天井裏に配置されがちなので、情報分電盤として明示的に場所を設けることでNASなどの他の機器も設置しやすくしました。

AP設置の下地づくり

APを天井に設置するうえで重要なのは天井に補強を入れてもらうことです。APの多くはオフィスビルの天井に固定することが想定されているので、普通は天井のパネルを固定している釣り天井のフレームにねじ止めするような作りになっています。しかし木造住宅は木の梁の上に石膏ボードが留められている構造のため、重量のある\footnote{CBW150AXは330g程度だけど石膏ボード相手はやや心配}APが天井から石膏ボードごと落ちてこないように確実に固定する方法が必要です。

ハウスメーカーに相談したところ、設置したい家の中央の天井に梁はちょうど通っていないのとどのみちLANの配線の為に梁は避ける必要があるため、重量のあるシーリング照明を設置するのと同じ方法で石膏ボード裏に当て板を配置してもらう方法が良いとアドバイスをもらいました。情報分電盤からのLANケーブルを露出するためのパネルと、APを固定するブラケット固定の構造を以下に示します。

APの設置のために実際に提出した資料

配置場所に関しては何も考えず家の中央で、リビング内にいれば目視で見える場所に決定しました。そもそも間取りが正方形なので壁が複雑な浴室回りを除けば十分に強度が高い電界が得られるという判断です。AP自体は1階と2階の2か所に設置しました。2階も大体同じ場所に配置しました。

引き渡し

必要な情報をハウスメーカーと打合せしてから数か月後、建築が完了して引き渡しの時期になりました。

情報分電盤(なぜか棚板がない)

情報分電盤にはコンセントにアースがないのが取り付けられていたほか、そもそもあるべき棚板が無い謎の状態になっていましたが、ちゃんと各部屋のRJ45の口が配置されていました。AP設置予定の天井からも情報分電盤から通じるLANケーブルが生えていました。ブラケット設置予定の場所にを軽くたたくと他より硬い感触が帰ってきたので、指定通り当て板が入っていることがわかります。

親方!天井からRJ45が!

APの設置と設定

ようやくCBW150AXを設置する段階に来ました。ものを渡して向こうで設置してもらうという手もありましたが、お金もかかるしさすがにこういうのを自分でやらないのは面白くないので自分でやりました。先にAPにLANケーブルを接続してブラケットの位置を定め、適当な木ネジで固定します。適当なマジックでブラケットのネジ穴にマーキングしてAPごと天井にこすりつけてネジ穴の箇所を天井に転写すればスムーズに位置合わせができました。あとはマニュアル通りにAPをスライドさせて固定し、手で動かして落下の可能性がなさそうなことを確認します。

LANケーブルの先まで指定していなかったため工具不要の大型のコネクタが施工されていたのが予想外のポイントでした。幸いAPには干渉することなく接続できましたが、LANケーブルの固さ(太さ)や先端のコネクタについてもちゃんと指定したほうが良かったです。

APを設置していく

PoEの電源が必要ですが、今回使用したCBW150AXにはPoEインジェクターが付属しています。買うといくらかするので結構太っ腹な付属品ですが、2階にも設置する都合上コンセントの占領は厄介なのでPoE対応のスイッチであるNETGEAR GS305Pにまとめて接続しました。APの設定はスマホアプリが用意されていて、小規模オフィス向けながら難しい設定なく2階のAPとも連動して1つのWiFiとして動作するようになりました。

おわりに

引越してこれまで利用していたデバイスをすべて元通りに接続していますが、ド安定で動作しているので非常に快適です。1階から2階に向かうハンドオーバーも特に何も設定せずとも適切に動作しているので買ってよかった2025という感じです。今回の教訓ではハウスメーカーに指定しないと適当なものが選定されてしまうので、コネクタ含めてしっかりと打合せするべきでした。

APを天井に設置することでWiFiルーターの設置位置やケーブルを見せることなく快適なWiFiネットワークが手に入るので、もし家を建てる場合には天井からLANケーブルを生やしておくとよいと思います。

現在の情報分電盤の惨状

おわり

Footnotes

  1. トイレにネットワークスイッチを置くオタクもいるようですが……


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